FP通信2025年12月号「デフレからインフレへ ― 2026年に向けた資産の守り方と考え方 ― 」
デフレからインフレへ ― 2026年に向けた資産の守り方と考え方 ―
物価が上がる時代、お金の価値は静かに減る
ここ数年、食品や日用品、外食など身近な価格が上がり続けています。物価が上がれば、同じ生活をするのに必要な金額も増えます。
これまでの日本は長くデフレが続いていたため、「お金は使わず貯めておく」ことが最大の防御でした。貯金の価値が減らなかったので、手元に置いておくことが安全で合理的だったのです。
しかし、今は状況が変化しています。物価が上がる一方で銀行預金の金利はほとんど増えないため、同じお金を持っていても価値が目減りする状態が続いています。
例えば、100万円を銀行に置いても、利息はごくわずか。一方で物価が3〜5%上がれば、同じものを買うのに数万円多く必要になります。
この違いが、「預金では資産を守りきれない」という感覚につながります。
2026年に向けた世界と日本の動き
2026年は、景気や金利に変化が生じる可能性が高い年といわれています。
アメリカは、景気を冷やしていた利上げが終わり、利下げが始まる可能性が示されています。利下げは企業活動を活発にし、株式市場にプラスに働く一方、ドル安の方向に動く場面も考えられます。
一方、日本は賃金と物価が上がる中で、ゆるやかな利上げが続く可能性があります。日本が利上げを行うのは珍しく、預金や債券の利回りに影響が出る可能性があります。
つまり、アメリカは利下げで景気刺激、日本は利上げで物価抑制と、違う方向に進むことで為替・株価・金利商品の変動が起こりやすくなり、資産の置き場所を考える必要性が高まると言えます。
「貯金が一番安全」は通用しづらい
デフレ時代は、貯金をしていればほぼリスクなく資産を守れました。
しかし、インフレ時代はお金を減らすリスクではなく、価値が減るリスクを考える必要があります。
もちろん、急に投資を増やしたり、大きなリスクを取る必要はありません。大切なのは、生活費として必要な分はしっかり確保しつつ、将来のお金は「増やす場所」に置く、という役割分けです。
【例】
▪ 積立NISAを少額から始める
▪ 金利商品を部分的に利用する
▪ 生命保険の活用方法を整理する など
できる範囲で対応するだけでも、将来の違いは大きくなります。
来年に向けて、資産の置き場所を一つ見直してみましょう
2026年は、金利・為替・物価が動く可能性が高い年です。
だからこそ、デフレ時代の価値観にとらわれず、守りながら育てる考え方が大切になります。
とはいえ、「投資しないと損」という極端な話ではなく、自分のお金がどこにあるのか、どんな目的で置いているのか、を整理することが最初の一歩です。
その上で、預金だけに偏っていないか、積立を始められる部分はないか、金利や税制を活かせるかなどを見直してみると、インフレ時代に備えやすくなります。
来年に向けて、まずは資産の置き場所を一つ見直すところから始めてみませんか。
小さな一歩でも、将来の安心につながります。

